株式投資に興味を持つとお金の勉強を始めます。
勉強を始めると資格に『簿記』と『ビジネス会計検定』の2つがあることを知ります。
どっちを勉強したらいいんだろう・・・?
大切なのはどっち??
最初はこんな悩みを抱えると思います。
結論、株式投資においてはどっちも大切です。
今回はその理由をそれぞれ紹介していきます。
2つの資格の特徴
まずは2つの資格の特徴を紹介します。
- 簿記の特徴
- ビジネス会計検定の特徴
簿記の特徴
まずは簿記の目的を知っておきましょう。
簿記は会社等の財務情報を記録し分析するための会計手法です。
古くは古代中世といった時代から商品取引を記録し経済を発展させてきました。
現代において株式会社は簿記学に基づいて取引情報・財務状況を記録し会社の透明性と信頼性を提供する情報源となっています。
簿記には次のような特徴があります。
企業での実用性が高い
簿記は実務に直結した知識とスキルを身につけることができます。
簿記の知識は、企業の財務状況を理解し、経営上の意思決定を行うために重要です。
就職・転職の強みになる
簿記には国際的な基準が存在し、企業や組織の財務報告はこれらの基準に従って行われます。
そのため、簿記の資格や知識は国際的にも認められ、転職や国際的なキャリアパスに役立ちます。
また受験者数が多く人気の高い資格でもあります。
下記は過去3回の受験者数と合格率になります。
受験日 | 受験者数 | 合格率 |
---|---|---|
2023年6月11日 | 10,618名 | 21.1% |
2023年2月26日 | 15,103名 | 24.8% |
2022年11月20日 | 19,141名 | 20.9% |
受験日 | 受験者数 | 合格率 |
---|---|---|
2023年6月11日 | 31,818名 | 34.0% |
2023年2月26日 | 37,493名 | 36.5% |
2022年11月20日 | 39,055名 | 30.2% |
ビジネス会計検定の特徴
ビジネス会計検定についても目的を知っておきましょう。
ビジネス会計検定は20世紀初め頃から会計教育の普及とともに会計検定の需要が高まり、会計検定協会や商工会議所などの団体が独自に検定試験を実施しました。
ビジネス会計検定には次のような特徴があります。
家計・資産運用で役に立つ
企業や投資対象の財務状況を評価する能力が向上します。
財務諸表や財務指標を分析することで、企業の収益性、安定性、成長性などを把握し、適切な資産運用の判断を行うことができます。
会社の中期経営計画等の戦略を把握できる
中期経営計画等は財務指標等を目標に立てられています。
これを読み解くことで何に重点を置いて戦略を立てているかが分かり自身の仕事・行動の腹落ち感に繋がります。
簿記に比べると受験者数が少なく、マイナーな資格であることは否めません。
下記は過去3回の受験者数と合格率になります。
受験日 | 受験者数 | 合格率 |
---|---|---|
2023年3月12日 | 2,568名 | 59.1% |
2022年10月16日 | 1,798名 | 53.3% |
2022年3月13日 | 2,587名 | 54.2% |
受験日 | 受験者数 | 合格率 |
---|---|---|
2023年3月12日 | 4,373名 | 61.7% |
2022年10月16日 | 4,588名 | 67.2% |
2022年3月13日 | 4,376名 | 63.5% |
2つの知識はどちらも大切
株式投資をする上では簿記の知識とビジネス会計検定の知識は両方必要と思っています。
その理由はそれぞれの特徴でもある『財務諸表を作成すること』と『財務諸表を分析すること』に起因します。
2つの知識が必要な理由をそれぞれ説明しています。
簿記の知識で大切なこと
簿記の知識で大切なことは次の3つです。
- 財務諸表の構成を理解できる
- 会計用語を理解できる
- 商品売買の関係を知れる
ひとつずつ紹介していきます。
財務諸表の構成を理解できる
簿記では財務諸表と呼ばれる『貸借対照表』『損益計算書』について学びます。
財務諸表が何を表していて、どうゆう構成で作られているかを理解することができます。
- 貸借対照表
ある特定の日付における企業の資産、負債、純資産の状況を示します。
資産は企業が所有する経済的な価値を持つものであり、負債は企業の債務や義務を表します。
純資産は資産から負債を差し引いたもので、企業の純資産の状況を示します。 - 損益計算書
ある特定の期間内の企業の収益と費用を示します。
収益は企業の売上やその他の収入を表し、費用は企業の経費や負債の返済などを示します。
損益計算書では、収益から費用を差し引いた利益または損失が計算されます。
簿記の基本を理解することで資産・負債と純資産の関係、費用と売上の関係を知ることができます。
いきなり企業分析に入ろうとするとたくさんの数字が並んでいるものを眺めるだけになりかねません。
まずは財務諸表の構成を確実に理解しましょう。
そのためには簿記を学ぶ必要があります。
会計用語を理解できる
企業の財務諸表は簿記に基づいて作成されています。
そして簿記には簿記特有の用語がたくさんあります。
例えば、
- 売掛金・買掛金
- 仕入・売上
- 資本金
- 利益剰余金
- 純資産
- 純利益
などがあります。
上記は簿記3級で出てくる単語です。
初見で見ると何を言っているんだ?となる単語です。
企業の財務諸表で出てくるのは簿記2級1級レベルの単語でたくさん出てきます。
そして言葉を理解せず財務諸表を理解することは困難です。
簿記では単語の意味を理解するところから始めれますので株式投資の入口としては最適です。
(ビジネス会計検定だと基本的な単語は分かっている前提で説明がされています)
簿記2級まで理解できれば大企業の財務諸表でも概ね理解できるようになります。
大企業の財務諸表は簿記1級レベルの内容ですが、調べながらであれば2級でついていけるレベルです。
ちなみに簿記3級レベルでは大企業の財務諸表を見るのは少し難しいと思います。
この辺りの簿記3級と2級の内容の違いについてはこちらの記事を参考にしてください。
商品売買の関係を知れる
商売の基本は、
商品を仕入れる⇒仕入れ代金を支払う⇒商品を売る⇒売上代金を受け取る
というのが基本の流れです。
代金が現金だけであれば簡単なのですが、実際の商売では現金以外の取引があります。
(というよりほとんど現金以外の取引をしています)
取引方法はさまざまあり、支払いにおいては銀行支払やクレジット支払、後払いに手形払いなどがあります。
売上の場合はこの逆ですね。
これらは財務諸表に売上債権や仕入債務として表れてきて、何の取引にこれらの項目が使われているのかイメージすることができます。
小難しい言葉が続きましたが、財務諸表に記載される項目が何の取引であるというイメージを掴むためには簿記で基本を学ぶことが大切になります。
ビジネス会計検定で大切なこと
ビジネス会計検定の知識で大切なことは次の3つです。
- 会社の安全性・収益性が分かる
- 株価の割安・割高が見えてくる
- キャッシュフロー計算書の見方が分かる
ひとつずつ紹介していきます。
会社の安全性・収益性が分かる
株式投資するときに投資先企業に対して気になることが多々出てきます。
この企業は倒産したり赤字になったりしないかな?
ちゃんと稼いでくれるかな?
この辺りを心配すると思います。
その心配を解消するために財務諸表から分析をします。
ビジネス会計検定では『安全性』と『収益性』という観点で学ぶことができ、一般的にこの手法で分析されています。
例えばこのような指標があります。
期間 | 分析指標 |
---|---|
短期の安全性分析 | 流動比率・当座比率・ネットキャッシュ |
長期の安全性分析 | 固定比率・負債比率・自己資本比率 |
短期の安全性分析では、負債(借金)を今すぐ全額返済する場合に保有している現金等で支払えるかを見ています。
長期の安全性分析では、設備等の投資を負債または自己資本(投資家から集めたお金)のどちらで賄っているか、負債と自己資本はどちらが多いかというのを見ています。
普通に考えれば負債は返却できる能力があって、負債より自己資本が多い方が安全というイメージがもてますよね。
次に収益性です。
収益性については次のような指標があります。
指標 | 内容 |
---|---|
総資産利益率(ROA) | 保有している全資産に対する利益の比率 |
自己資本利益率(ROE) | 自己資本に対する利益の比率 |
簡単に言えば持っているお金・資産でどれだけ多くの利益を生み出しているかを見ています。
少ないお金で大きな利益を得ていれば収益性は抜群ということですね。
これらは1例ですが、ビジネス会計検定では企業の安全性や収益性を数字で分析することができます。
簿記ではこれらの分析を学ぶことはありませんので、ビジネス会計検定ならではの知識と言えます。
株価の割安・割高が見えてくる
安全性や収益性が問題なくある企業の株を買いたいと思ったとき、
今この株を買っていいのかな?
ずいぶん株価が上がってるけど大丈夫かな?
こんなことを考えてしまいます。
こういった悩みに対しても割安か割高かを測る指標があります。
指標 | 内容 |
---|---|
株価収益率(PER) | 1株あたりの株価を1株利益で割った値 |
株価純資産倍率(PBR) | 1株あたりの株価を1株純資産で割った値 |
株式投資を始めることで悩んでいる人ならPERやPBRといった言葉はよく耳にするのではないでしょうか。
この2つも1例ですが、投資判断の材料によく使われる指標です。
一般的には低ければ割安、高ければ割高ということになりますが、その理由についても学ぶことができます。
ビジネス会計検定を学べば今、投資しようという判断がし易くなるということですね。
簿記ではPER、PBRといった言葉は出てきませんのでビジネス会計検定ならではの知識です。
キャッシュフロー計算書の見方が分かる
キャッシュフロー計算書は企業の現金を収支を表すものです。
なぜ現金の収支を見るのかというと、企業から現金がなくなると資金繰りが悪化し倒産に至るからです。
黒字倒産という言葉をご存じでしょうか?
なぜこんなことが起きるかというと、損益計算書は現金の収支ではなく収益と費用の差額の利益を見ているからです。
はい?何が違うの?
分かりやすくいうと損益計算書の収益には現金以外の項目も含まれているのです。
代表的なものが売掛金や受取手形といった後払いで現金を受け取る項目です。
これは現金を受け取っていない状態で収益計上するので黒字に見えるのですが現金は入ってきません。
それにもかかわらず出ていくお金が次々くれば現金がなくなり倒産となってしまいます。
これは現金が企業にあるということを確認しなければ分からないことであり、これを把握するためにキャッシュフロー計算書があります。
またキャッシュフロー計算書は損益計算書と違う見方をしなくてはいけません。
損益計算書ではプラスする項目をキャッシュフロー計算書ではマイナスにしたりその逆もあります。
初見ではどういう理由でキャッシュフローを計算しているかとても分かりにくいです。
これらはビジネス会計検定で詳細に学ぶことができるため簿記にはない魅力になります。
2つの資格の知識で分かること
株式投資をするときに多くの人が学びたい内容はビジネス会計検定の知識だと思います。
私もそう思います。
株を買うときに考えることは、『安全に儲けることができて安く買いたい』というのが普通と思います。
この判断材料はビジネス会計検定で学べます。
一方でビズネス会計検定の内容は簿記の知識がないと理解し難いものが多いです。
そのため結論としては、
株式投資においてはどっちも大切
です。
おすすめの勉強シナリオ
私のおすすめ勉強シナリオは
簿記→ビジネス会計検定で勉強することです。
最初に簿記から
まずは簿記を勉強し会計用語を覚え財務諸表の構成を覚えていきましょう。
株を始めると大企業に投資をしたくなると思いますので、連結会計を学べる簿記2級まで理解しておくのがおすすめです。
ただ連結会計は簿記1級に近い内容でMUSTで覚えなければならないことでもないので、早く株式投資を始めたい人は簿記3級レベルでも問題ないと思います。
簿記2級を取得してよかったと思うことをこちらの記事に纏めています。
おすすめの教材はこちらです。
次にビジネス会計検定
簿記の知識を身につければビジネス会計検定を学びましょう。
こちらも連結財務諸表を理解するためにはビジネス会計検定2級がおすすめです。
ただ簿記同様MUSTではありませんので3級から始めるのもありです。
資格取得は必要か?
勉強が進めば次は受験が見えてきます。
実際に資格を取得するかは皆さんの自由ですが、私のおすすめを紹介します。
簿記は取得を目指す
冒頭でも解説しましたが、簿記は人気が高く事務系においては就職・転職にも役に立つ資格です。
そのため今の環境で資格が必要なくても何かの時に役立つ可能性は充分にあります。
また受験料も
- 簿記3級:2,850円(税込み)
- 簿記2級:4,720円(税込み)
と安価であるため気軽に試験に臨めます。
簿記の知名度は高く、
「簿記を持ってるよー」と言うと褒められることも多々あります。
ビジネス会計検定は知識だけで充分
ビジネス会計検定はマイナーな資格です。
資格を持っていても
何その資格?
と言われることも多いです。
受験料は
- ビジネス会計検定3級:4,950円(税込み)
- ビジネス会計検定2級:7,480円(税込み)
と簿記に比べて高めです。
せっかく勉強したのであれば取得したいと思う人は受験するといった感覚でいいのかなと思います。
まとめ
簿記の知識もビジネス会計検定の知識も合わせて使うと素晴らしいお金の知識になります。
株式投資をする前は企業の決算書を見て『さっぱり分からない』と思っていたことが、だんだんと見えてくるものが増えてきます。
そうなってくると財務諸表を見るのが面白く、株式投資することが面白くなってきます。
ぜひ皆さんも知識を付けて株式投資に臨んでみてください。
以上!
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