これから日商簿記を勉強する人、簿記3級を取得して2級まで勉強しようとしている人にはこんなことを思っていませんか?
簿記3級と2級って内容は何が違うんだろう?
2級は難易度が高くなるのは分かるけど3級と何が変わるんだろう?
簿記3級と2級では難易度も上がりますしボリュームも増えてきます。
今回は簿記3級と2級の違いについて解説していきます。
解説内容としては2級で追加される内容についてフォーカスします。
これから簿記2級に挑戦する人も3級と2級のどちらを勉強するかを悩んでいる人もぜひこの記事を参考にしてイメージを掴んでみてください。
資格としての違い
日本商工会議所では各級の定義は下記のようになっています。
- 簿記3級のレベル
業種・職種にかかわらずビジネスパーソンが身に付けておくべき「必須の基本知識」として、多くの企業から評価される資格。
引用:商工会議所の検定試験
基本的な商業簿記を修得し、小規模企業における企業活動や会計実務を踏まえ、経理関連書類の適切な処理を行うために求められるレベル。
- 簿記2級のレベル
経営管理に役立つ知識として、企業から最も求められる資格の一つ。
引用:商工会議所の検定試験
高度な商業簿記・工業簿記(原価計算を含む)を修得し、財務諸表の数字から経営内容を把握できるなど、企業活動や会計実務を踏まえ適切な処理や分析を行うために求められるレベル。
一般的に就活や転職で役に立つのは2級からと言われています。
合格率についても大きな違いがあります。
受験日 | 合格率 |
---|---|
2023年2月26日 | 24.8% |
2022年11月20日 | 20.9% |
2022年6月12日 | 26.9% |
受験日 | 合格率 |
---|---|
2023年2月26日 | 36.5% |
2022年11月20日 | 30.2% |
2022年6月12日 | 45.8% |
2級の合格率は20%前後、3級の合格率は40%前後といったところです。
勉強内容の違い
勉強内容の違いは簿記3級に対して2級で追加される内容を解説していきますが、試験で躓きやすい項目をピックアップします。
簿記3級の内容が分からない人にもできるだけ分かり易く解説します。
大きな違いは次の通りです。
- 取引方法が複雑化
- 有価証券の取引
- 税効果会計の考え方
- 連結会計
次の工業簿記は2級から追加される新しい科目です。
- 製造原価の種類
- 原価計算の方法
ひとつずつ紹介していきます。
商業簿記編
商業簿記は3級の内容が複雑になります。
さらに『なんでこんな面倒なことを!?』と思ってしまう項目が多々あります。
内容がイメージできるよう解説していきます。
取引方法が複雑化
最初は取引方法が複雑化することで難易度が上がります。
3級の場合、商品や固定資産を買って売るをベースに現金取引するか売買掛金などで後払いにするかといったものでした。
2級で複雑になるのは取引のパターンが増えることです。
代表的な項目で『売上原価対立法』『リース取引』『固定資産の取り扱い』を挙げます。
売上原価対立法について
3級では3分法という記帳方法だけでしたが、2級では売上原価対立法という記帳方法が追加されます。
簡単に説明すると3文法が「仕入れ」「売上」で記帳するのに対し、売上原価対立法は「商品」「売上」で記帳します。
仕入れは決算時に売上原価にありますが、商品は売れたときに売上原価になります。
記帳方法が増えることで難易度が上がる要因の1つとなっています。
リース取引について
リース取引の場合、買う売るではなく借りるという項目が追加されます。
借りるだけなら簡単に理解できそうと思いがちなのですが、リースもなかなか複雑です。
借りる以上利息を払わなくてはいけないので、利息の計算とそれをどのタイミングで払うかによって記帳方法が変わります。(ファイナンスリース・オペレーティングリースで分類されます)
取引方法が追加されることで難易度が上がることになります。
固定資産の取り扱いについて
3級での固定資産の項目は購入して原価償却して保有を続けるか売るという流れでした。
2級では固定資産を買って売る以外に「買い替え」「除却」「廃棄」「消失」「改良」「補修」「補助金の使用」などがあります。
3級からあった原価償却方法も1つから3つに増えます。(定額法・定率法・生産高比例方)
覚えることが多い上に試験にはよく出ますのでしっかり理解する必要がありますので難しい内容になります。
他にも複雑化した取引はありますが、代表的なものとして3つ挙げました。
有価証券の取引
有価証券の取引は3級には登場せず、2級から登場する項目になります。
有価証券は株式と債券の取引について学ぶことになります。
どちらも保有しているときの配当金や利息を計算したり、売買したときに利息がどうなるかを考えなくてはなりません。
また有価証券は『売買目的有価証券』『満期保有目的債権』『子会社・関連会社株式』『その他有価証券』の4つに分類され、それぞれ計算方法や時価評価方法が変わります。
それぞれの特性を理解しつつ配当金や利息を計算するため難易度が上がります。
参考までにそれぞれの有価証券の概要を記載します。
有価証券の種類 | 概要 |
---|---|
売買目的有価証券 | 売買により利益を得ることが目的 |
満期保有目的債権 | 満期まで保有し利息を得ることが目的 |
子会社株式・関連会社株式 | 会社の支配・影響を与えることが目的 |
その他有価証券 | 上記以外の目的(持合い株など) |
税効果会計の考え方
税効果会計は初見では何をやっているのか、何のためやっているのかが非常に分かりにくいです。
簡単に言うと会計上の利益と税務上の利益は一致しない場合があるため、それを一致させるための対応が税効果会計です。
なんで一致しないの?
初めから一致させるように計算できないの??
学ぶ側からするとごもっともな意見と思います。
会計と税務はそもそも目的が違うため計算方法が違うのです。
簿記において目的の違いを覚える必要は必ずしもありませんが、そうゆうものだと思い会計と税務の利益を一致させることになります。
ちなみに会計と税務の目的はこのように違います。
- 会計:財務諸表・決算書を作ることを目的とする
- 税務:税金を計算することを目的とする。
私なりの簡単な解釈としては、「会計では減価償却費や引当金などの費用を幅を持たせて金額を決められるため利益を少なくすることができる。しかし公平な課税をするためには費用を適正にして利益を算出する必要があるため税務上の考え方を適用する」と考えています。
費用に限らず収益に対する考えもあるため1例として捉えてもらえればと思います。
普段関わらない税金について学ぶことになることが難易度が上がる要因です。
連結会計
連結会計も2級から登場する項目であり最も難しい項目です。
3級では1社のみの財務諸表を作るだけでしたが、連結会計となると親会社・子会社といったグループ会社の財務諸表を作ることになります。
連結会計はとても複雑で計算することが多く理解が難しくなります。
連結(子会社化)した年から現在に至るまで仕分けをしなおしたり、グループ会社内で取引を消去したり、取引した商品などの利益を消去したりとこの項目だけで内容がてんこ盛りです。
2級に挑戦する最大の壁は連結会計です。
試験で連結会計が出ると時間が足らなくなるくらい計算ボリュームが多いです。
しかし連結会計を覚えるメリットもあります。
個人が投資で気になる会社の財務諸表はほとんどが連結決算書です。
つまり連結会計を理解すれば多くの会社の連結決算書を読むことができるようになります。
大手企業に投資したいと考えている人にはぜひ覚えておきたい項目と言えます。
私も連結会計を覚えるのにかなり苦労しました。
試験でも連結会計の出る回にあたって時間ギリギリまでかかりました。
工業簿記編
工業簿記自体2級から登場します。
3級の教本は商業簿記1冊でしたが、2級は工業簿記でもう1冊増えて2冊になります。
商業簿記は商品を買って売るという流れでしたが、工業簿記は材料を買って作って売るといった流れになります。
費目の種類
製品の製造費(製造原価)を算出する場合、かかった費用を合算する必要があります。
かかった費用は下記項目に分類されます。
- 材料費
- 労務費(賃金)
- 経費
まずは材料費・労務費(賃金)・経費が何かを知り製造原価を計算することになります。
この項目で難しいのは予定消費量を算出して計算していくところです。
予定消費量とは消費する材料・賃金・経費を事前に見込んでおくことです。
そして予定消費量と実際消費量を差異を計算して製造原価を算出します。
そんなめんどくさいことしないで実際消費量で計算すればいいじゃない
そうすれば簡単に原価計算できるのですが、算出が遅くなることになります。
早く算出するためには予定消費量を計算する必要があるのです。
このようなやり方があるために難易度が上がってきます。
製造原価の計算方法
製造原価の計算方法は製品を製造するのにかかった材料費、賃金、経費を足し合わせて製造原価を算出します。
製造原価を算出するには複数の計算方法があります。
これが多いので覚えるのが大変です。
- 個別原価計算
- 部門別個別原価計算
- 総合原価計算
- 標準原価計算
- 直接原価計算
名称だけみても違いが分からないと思いますので簡単に内容を説明します。
個別原価計算、部門別個別原価計算は単純に1つの製品を作りその製造原価を計算するだけですので比較的簡単です。
部門別個別原価計算は名前の通り製造過程において部門が分かれた場合に使用します。
例えば組み立てと塗装は別の部門で行うのでそれぞれ原価計算する場合です。
その他はとても複雑になります。
特に総合原価計算、標準原価計算、直接原価計算の難易度が高いです。
総合原価計算は製品を大量生産する場合をイメージして計算します。
例えば1か月間の材料費、賃金、経費を計算して生産量から1つの製造原価を算出する方法です。
この計算には条件が多いのが特徴です。
- 月初めや月末に作りかけ製品(仕掛品)が残っていたら?
- 製造過程で材料の損失があったら?
- サイズが異なる製品を一緒に作ったら?
ひとつずつ計算方法を覚えるだけでも大変ですが、いざ問題を見たときにどの計算をするのか混乱しがちです。
標準原価計算は製品の製造過程において無駄なコストを見極めるための計算です。
製品の標準単価と実際にかかる単価を計算比較しどこに無駄があるかを明確にします。
この無駄なコストは『材料なのか?』『労務費なのか?』『その他なのか?』をそれぞれ見ていくため考えが複雑になります。
直接原価計算は製造原価を変動費と固定費に分けて計算します。
その理由は製品をいくらでどのくらい販売すれば利益が出るかを明確にするためです。
固定費は販売数に関わらず必要になるものです。(工場の光熱費など)
つまり製品を販売しても最低でも固定費分は回収しないと利益にはならないということです。
この構造を明確にするために直接原価計算をしていくことになります。
製造業という職種の人にはイメージがつくかもしれませんが、そうでない人には何をやっているのか分からないまま計算するような状況になりかねません。
しっかり計算の流れをイメージして理解する必要があります。
勉強時間の違い
まずは筆者の実績を紹介します。
- 簿記3級:80~90時間
- 簿記2級:300~350時間
一般的に言われている勉強時間は3級で100時間程度、2級で300時間程度と言われているため、実績とほとんど同じと思います。
詳細の実績はこちらの記事を参考にしてください。
ちなみに勉強時間は独学で勉強した場合です。
独学で勉強する場合はTAC出版の教材がおすすめです。
簿記を取得しての感想
簿記を取得しての感想はこちらの記事にまとめています。
結論メリットばかりです。
まとめ
簿記の知識は自分の資産運用や社会の経済状況を把握するのに有益な資格です。
本記事を読んで『なんとなくイメージできた』『これは知りたい知識』と思った人はぜひ簿記にチャレンジしてみてください。
以上!
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